前職の話(11) 時限爆弾のようなもの。
突然クビを宣告された課長。
正直それを聞いたとき、私は「あ~もう面白い仕事はできないんだなぁ」と思った。
発注者からも信頼されていて、多少難しい物件が出ると、その課長に相談が来ていて結果的に、私も難しい設計をする機会が得られた。
そんな楽しみが無くなるとなると、今まで我慢していた嫌がらせを我慢する意味も無いと思ったし、実際我慢出来ないと思った。
私は何回も課長の最後の仕事として、私の出向を解除して欲しいと頼んだ。
しかし大きなプロジェクトの最中だった事もあってか結局それは叶わなかった。
社長がクビになった理由は隣の席の派遣社員に教えて貰った。辛かった。
理由を知った次の日、帰宅する車の中で涙が止まらなくなってしまった。色々な感情が溢れて、辛かった。
クビになった理由には、失踪した前社長が深く関わっている。
課長に全く非がないとは言わないが、後日催された送別会で、初めて悔しそうな表情で別れの挨拶をしているのを見て申し訳ないと思った。
時は前社長が失踪した頃に遡る。
実は前社長は会社の経営が危うくなると共に、借りてはいけない所からお金を借りていたらしい。
自身の給与も出ていなかった状態で、返せるものもなかったが「返せない」で済むわけがない相手である。
結局その時に、会社で使用していたノートパソコンを借金取りに渡し、この課長を脅せば金が取れると言って失踪したそうだ。
脅される理由を簡単に言うと、キックバックなんだが、それをしていたのはウチの会社の前社長である。
本来10万円の工事費を請求するところを、課長の指示で15万円で請求し上乗せ分を課長に返すという単純な方法だが、その指示をしたメールを売られたのだ。
それからの2年間の間に、借金取りが元請会社に来たこともあったそうだ。
バラされたくなければ金を払えと脅されたが、1円たりとも払わなかったらしい。
相手はヤーさんですから、その資金源になるのもマズイし1度払ったからといってチャラになるのかも分からない。
いつまでも脅しに屈しない課長に相手が先に痺れを切らしたようだ。